自作PCのマザーボードやグラフィックボード、M.2 SSDを調べていると、「PCIe 4.0」「PCIe 5.0」という表記を目にします。
数字だけを見るとPCIe 5.0の方が新しく高速なので、「これからPCを組むなら、グラボもSSDもPCIe 5.0で揃えた方がいいのでは?」と思うかもしれません。
チエバコPCIe 5.0対応と書かれていると、せっかく新しく組むなら5.0を選びたくなりますよね。でも、本当にそこまで必要なのでしょうか。
結論からいうと、PCIe 5.0はPCIe 4.0より高速ですが、すべてのパーツをPCIe 5.0で揃える必要はありません。
特にグラフィックボードとM.2 SSDでは、PCIeの世代による影響の出方が違います。さらに、同じPCIe 5.0対応マザーボードでも、グラボ用スロットとM.2スロットの仕様が同じとは限りません。
この記事では、PCIe 4.0とPCIe 5.0の違いを確認したうえで、自分の用途ならどこまでPCIe 5.0を気にすればよいのかを判断できるように整理します。
PCIe 4.0とPCIe 5.0の違いを先に整理
PCIe(PCI Express)は、CPUやマザーボードと、グラフィックボード、NVMe SSD、拡張カードなどを接続するための規格です。
PCIe 4.0やPCIe 5.0の「4.0」「5.0」は世代を示しており、「Gen4」「Gen5」と表記されることもあります。
PCI-SIGによると、PCIe 4.0は1レーンあたり16GT/s、PCIe 5.0は32GT/sに対応します。つまり、PCIe 5.0はPCIe 4.0の2倍の転送レートを持っています。
| 比較項目 | PCIe 4.0 | PCIe 5.0 |
|---|---|---|
| 世代の呼び方 | Gen4 | Gen5 |
| 1レーンの転送レート | 16GT/s | 32GT/s |
| x4の理論帯域幅(片方向) | 約7.9GB/s | 約15.8GB/s |
| x16の理論帯域幅(片方向) | 約31.5GB/s | 約63GB/s |
| 主な用途 | グラボ・M.2 SSDなど | 最新グラボ・高速M.2 SSDなど |
| 互換性 | 旧世代と互換性あり | PCIe 4.0以前と互換性あり |
数字を見ると大きな違いですが、ここで注意したいのが、PCIeの帯域幅が2倍になっても、PCの処理速度が2倍になるわけではないことです。
PCIe 5.0は速いがPC全体が2倍速くなるわけではない
PCIeは、パーツ同士がデータをやり取りするための通り道です。
PCIe 4.0からPCIe 5.0になると、この通り道の最大容量は約2倍になります。しかし、実際の処理速度はCPU、GPU、メモリ、SSD、使用するソフトなど複数の要素によって決まります。
たとえば道路を2車線から4車線に広げても、もともと走っている車が少なければ移動時間はほとんど変わりません。PCIeもこれと似ており、PCIe 4.0の帯域を使い切っていない用途では、PCIe 5.0にしても大きな性能差が出ないことがあります。
- PCIe 5.0はPCIe 4.0より規格上の帯域幅が約2倍
- 帯域幅が2倍でも、実際の処理速度が2倍になるわけではない
- 使用するパーツや用途がPCIe 4.0の帯域を使い切るかどうかが重要
- 「5.0だから速い」だけで購入を決めず、用途と価格を合わせて判断する
グラボはPCIe 4.0とPCIe 5.0をどこまで気にする?
グラフィックボードでは、PCIe 5.0対応モデルが増えています。
たとえばNVIDIAのGeForce RTX 50シリーズではPCI Express Gen 5に対応するモデルがあり、最上位のGeForce RTX 5090もPCIe 5.0に対応しています。
それでは、PCIe 5.0対応グラボを使うためにPCIe 5.0対応マザーボードへの買い替えが必須かというと、そうではありません。
PCIe 5.0対応グラボでもPCIe 4.0で使える
PCI Expressには世代間の互換性があります。
そのため、PCIe 5.0対応グラフィックボードをPCIe 4.0対応スロットに取り付けても、基本的にはPCIe 4.0として動作できます。
逆に、PCIe 5.0対応スロットへPCIe 4.0対応グラボを取り付けることもできます。この場合はPCIe 4.0として動作します。
つまり、グラボとマザーボードのPCIe世代が完全に一致していなければ使用できないわけではありません。
グラボではPCIeの世代よりレーン数にも注意する
グラボを選ぶときは、「PCIe 4.0か5.0か」だけでなく、「x16」「x8」といったレーン数も確認しておきたいポイントです。
PCIeは1本のレーンだけで通信しているわけではありません。複数のレーンを束ねることで帯域幅を増やしており、グラボではx16がよく使われます。
PCIe 5.0 x8とPCIe 4.0 x16は、理論上ほぼ同等の帯域幅になります。そのため、「Gen5だから必ず高速」と世代だけを見るのではなく、実際に何レーンで接続されるのかまで確認することが大切です。
2025年にPuget SystemsがPCIe 5.0対応GPUを使って行ったクリエイティブ用途の検証でも、PCIe 5.0 x16、PCIe 5.0 x8、PCIe 4.0 x16は高帯域側では近い性能を示した一方、さらに帯域幅を減らした構成では性能低下が確認されています。



グラボでは「Gen4だからダメ」と考えるより、PCIe 4.0 x16で使えるなら、本当にGen5が必要なのかを考えた方がパーツを選びやすくなります。
M.2 SSDはPCIe 4.0とPCIe 5.0で何が変わる?
M.2 NVMe SSDでは、PCIe 4.0とPCIe 5.0の違いが製品スペックにはっきり表れます。
PCIe 4.0 x4の理論帯域幅は片方向で約7.9GB/s、PCIe 5.0 x4では約15.8GB/sです。そのため、最新のGen5 SSDでは、Gen4 SSDを大きく上回る連続読み出し速度を持つ製品があります。
一例としてSamsung 990 PROはPCIe 4.0 x4対応で最大読み出し7,450MB/s、PCIe 5.0 x4対応の9100 PROでは最大14,800MB/sです。
| 比較項目 | PCIe 4.0 SSDの例 | PCIe 5.0 SSDの例 |
|---|---|---|
| 製品例 | Samsung 990 PRO | Samsung 9100 PRO |
| インターフェイス | PCIe 4.0 x4 | PCIe 5.0 x4 |
| 最大連続読み出し | 7,450MB/s | 14,800MB/s |
| 向いている用途 | 一般用途・ゲーム・幅広いPC作業 | 大容量データ転送・高速ストレージを生かす作業 |
スペック表だけなら、Gen5 SSDが圧倒的に速く見えます。
しかし、SSDもグラボと同じように、最大転送速度がそのまま普段の体感速度になるわけではありません。
一般的なアプリやゲームではGen4との差が小さいこともある
2026年にPC WatchがPCIe 5.0、4.0、3.0、SATA SSDなどを比較した検証では、PCIe 5.0 SSDは連続読み書きで大きな性能差を示しました。
一方、OSやアプリのレスポンスではPCIe 5.0と4.0との差は小さく、実際のゲームのロード時間でもPCIe接続SSD同士の差は限定的という結果でした。
これは、通常のアプリ操作やゲームが常に10,000MB/sを超えるような連続データ転送を行っているわけではないためです。
Webブラウザ、Office、動画視聴、一般的なゲームなどが中心なら、高性能なPCIe 4.0 SSDでも十分に快適な環境を作れます。
大容量ファイルを頻繁に扱うならGen5を生かしやすい
一方で、大きなファイルを高速SSD同士でコピーする作業や、大容量データを継続的に読み書きする用途では、PCIe 5.0 SSDの高い連続転送性能を生かせる可能性があります。
高解像度の映像素材、大容量のRAWデータ、大規模なデータセットなどを日常的に扱い、ストレージの読み書きが作業時間を左右する人なら、Gen5 SSDを選ぶ理由が出てきます。
PCIe 5.0 SSDを選ぶときは発熱と価格も見る
SSDを選ぶときは、転送速度だけでなく冷却方法も確認しておきましょう。
高速なNVMe SSDは動作時に発熱するため、マザーボード側にM.2ヒートシンクが装備されている製品も増えています。PCIe 5.0 SSDには大型のヒートシンクを備えたモデルもあります。
SSD側のヒートシンクを使うのか、マザーボード付属のM.2ヒートシンクを使うのかも購入前に確認しておくと安心です。
また、同じ予算なら、Gen5の1TBとGen4の2TBなど、速度を優先するか容量を優先するかという選択になる場合があります。
ゲームを複数インストールしたり、写真や動画を多く保存したりするPCなら、最高転送速度より容量を増やした方が使いやすくなることもあります。
PCIe 4.0とPCIe 5.0には互換性がある
PCIe 4.0とPCIe 5.0を選ぶうえで知っておきたいのが、世代間の互換性です。
- PCIe 5.0スロットにPCIe 4.0対応機器を接続できる
- PCIe 4.0スロットにPCIe 5.0対応機器を接続できる
- 基本的には接続した機器とスロットのうち低い世代に合わせて動作する
- 世代だけでなくレーン数やマザーボード固有の仕様も確認する
そのため、現在PCIe 4.0環境を使っているからといって、PCIe 5.0対応グラボやSSDを最初から候補から外す必要はありません。
逆に、PCIe 5.0対応マザーボードを購入しても、最初は価格や用途を優先してPCIe 4.0 SSDを使い、必要になったときにGen5 SSDへ交換するという組み方もできます。
マザーボードのPCIe 5.0対応は「どこが5.0か」を確認する
マザーボードを選ぶときに最も注意したいのが、「PCIe 5.0対応」という表記だけで判断しないことです。
PCIe 5.0に対応していても、グラボ用のPCIe x16スロットがGen5なのか、M.2スロットがGen5なのかは製品によって異なります。
AMDのSocket AM5向けチップセットを例にすると、X870EやX870はグラフィックス用PCIe 5.0 x16とNVMe用PCIe 5.0 x4に対応しています。一方、B850はAMDの基本仕様ではグラフィックスがPCIe 4.0、NVMeがPCIe 5.0です。
| AMD AM5チップセット | グラフィックス | NVMe | 選ぶときの見方 |
|---|---|---|---|
| X870E | PCIe 5.0 x16またはx8/x8 | PCIe 5.0 x4 | グラボ・NVMeともGen5を重視する構成向け |
| X870 | PCIe 5.0 x16またはx8/x8 | PCIe 5.0 x4 | Gen5を含む高性能構成を組みやすい |
| B850 | PCIe 4.0 x16またはx8/x8 | PCIe 5.0 x4 | SSDはGen5、グラボはGen4でもよい場合の有力候補 |
| B840 | PCIe 4.0 x16 | PCIe 4.0 x4 | Gen5を必要としない用途向け |
さらに、実際のマザーボードでは同じチップセットでもM.2スロットごとに世代が違うことがあります。
たとえば複数のM.2スロットを備える製品では、一部がPCIe 5.0 x4、残りがPCIe 4.0 x4という構成があります。
M.2 SSDを増設するとグラボのレーン数が変わる場合もある
さらに注意したいのが、PCIeレーンの共有です。
マザーボードによっては、特定のM.2スロットへSSDを取り付けると、グラボ用PCIe x16スロットがx8動作に切り替わる製品があります。
たとえばASUS ROG STRIX X870E-E GAMING WIFIでは、特定のPCIe 5.0対応M.2スロットを使用すると、グラフィックボード用PCIe 5.0 x16スロットがx8動作になる仕様があります。
これは故障や不具合ではなく、CPUから利用できるPCIeレーンを複数の機器で分けて使うための設計です。
マザーボードを選ぶときは「PCIe 5.0対応」の文字だけではなく、仕様表のExpansion Slots、Storage、M.2、Lane Sharingなども確認しましょう。
用途別|PCIe 4.0とPCIe 5.0はどちらを選ぶ?
ここまでの違いを踏まえると、PCIe 4.0とPCIe 5.0のどちらを選ぶかは用途によって変わります。
| 主な用途 | グラボ側 | M.2 SSD側 | PCIe 5.0の優先度 |
|---|---|---|---|
| Web・Office・動画視聴 | Gen4で十分 | Gen4で十分 | 低い |
| 一般的なゲーム | Gen4 x16でも十分な場合が多い | Gen4で十分 | 低~中 |
| 高性能ゲーミングPC | GPUとマザーボードの仕様を確認 | 容量と価格を含めて選択 | 中 |
| 写真・一般的な動画編集 | 使用するGPUに合わせる | 高速Gen4も有力 | 中 |
| 大容量データを頻繁に転送 | 用途に合わせる | Gen5を生かしやすい | 高い |
| 長期間使う新規自作PC | マザーボード側にGen5を確保する選択肢 | 最初はGen4、将来Gen5でもよい | 中~高 |
| 予算を抑えたい | 必要性能を満たすGen4も選択 | Gen4の容量を優先しやすい | 低い |
PCIe 5.0を選ばないことは妥協ではない
自作PCでは、数字が大きい製品や新しい規格を見ると、できるだけ新しいパーツで揃えたくなります。
しかし、PCはCPU、グラボ、メモリ、SSD、電源、冷却など複数のパーツを組み合わせて使うものです。
一つのパーツだけに予算を集中させるより、PC全体のバランスを考えた方が快適になる場合があります。
たとえば、普段の用途では違いを感じにくいPCIe 5.0 SSDを選ぶために予算を増やすのであれば、PCIe 4.0 SSDにして容量を増やしたり、メモリを増設したり、CPUや電源、冷却に予算を回した方が効果的なこともあります。
- Web・Office中心ならGen5を最優先する必要はない
- ゲーム用SSDなら速度だけでなく容量と価格も重視する
- 大容量データを頻繁に扱うならGen5 SSDを検討する価値がある
- 新規自作ではマザーボード側にGen5対応を持たせ、将来の選択肢を残す考え方もある
- 高額なパーツを揃えるのではなく、自分の用途に必要な部分へ予算を配分する
PCIe 4.0を選ぶことは、必ずしも性能を妥協することではありません。
自分の用途ではPCIe 5.0の性能を使わないと判断したうえでGen4を選ぶのであれば、それは予算を有効に使ったパーツ選びです。
PCIe 4.0とPCIe 5.0の違いまとめ
PCIe 5.0はPCIe 4.0と比べ、1レーンあたりの転送レートが16GT/sから32GT/sへ倍増しています。
しかし、グラフィックボードやM.2 SSDを選ぶときに重要なのは、規格上の最大速度だけではありません。
グラボではPCIe 4.0 x16でも十分な帯域を確保できるケースがあり、PCIe 5.0対応グラボだからといって、必ずGen5マザーボードが必要になるわけではありません。
M.2 SSDではGen5の高速化がスペックには明確に表れますが、Web、Office、一般的なアプリ、ゲームなどではGen4との差を体感しにくい場面もあります。
その一方で、大容量ファイルを頻繁に扱う用途ではPCIe 5.0 SSDの高速転送を生かせる可能性があります。
これから新しくPCを組むなら、マザーボード側にPCIe 5.0対応スロットを確保して将来の拡張性を持たせながら、今使うグラボやSSDは用途と予算に合わせてPCIe 4.0も含めて選ぶという考え方ができます。
自作PCでは「一番新しい規格だから選ぶ」のではなく、自分の使い方に必要な性能を見極め、必要なところへ予算を使うことが大切です。


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